4-76.小姐訪問
2008 / 08 / 04 ( Mon )
CN4-76

それから数週間の後に慌しく動きがあった。
結局交渉がまとまり、うちの会社は中国から撤退することになったのだ。

撤退処理で上海には何度も行ったが、彼女と会う機会は見つけられなかった。今までみたいな進捗確認だけのお気軽出張ではないのだ。いろいろな部門とのやり取りもあるし、出張そのものも一人じゃない。気心知れた中であれば途中で別れて自由行動もありだけど、現実には同行する法務や経理の介添え役をしなければならないし、そもそも法務の連中は俺が上海の人間と個人的に交友するのを極端に嫌がった。

正直、生活費の援助を終えた後に彼女とまともな関係を続けられるかどうか自信はなかった。でも彼女はそれに納得したと言ったし、その後も定期的にSMSが来る。

以前ほどの熱烈さはないとはいえ、もう一度会ってみたいとは思った。
でも、その逢瀬が実現できない。

理由は仕事のせいなんだけど、彼女にそれが伝わっているかどうかはわからなかった。

3月になって契約書のサインが終った週末の朝。俺は上海行きの航空券を持って空港に向かっていた。土日を利用して、自腹で彼女に会いに行くことにしたのだった。土曜の朝便で上海に入り、日曜の午後便で帰る旅だ。時間はないけれども、会って彼女との関係を確かめる上では十分だろう。



空港でトイレに入り、トイレットペーパーを1ロール失敬する。上海に着いたら入国審査の列に並びながら彼女にSMS。通関を抜けて外の乗り場でタクシーを拾い、彼女のマンションに直行だ。数ヶ月ぶりの再会に胸が躍る。

マンションに到着して、サムソンの広告を流すディスプレイの前でエレベータを待つ。上に上がって白塗りの廊下を歩くと彼女の部屋だ。呼び鈴はならないのは分かっているので、白塗りの木の扉をどんどんと2回ノックした。

返事がない。

また2回ノックする。

ノックの音が誰も居ない廊下に響く。おかしいな、彼女はどこに行ったんだろう。SMSでは何も言っていなかったのに。

と、急に人の動く気配がしてドアの鍵が音を立てて開いた。扉が少しだけ開き、そこで止まる。不思議に思いながらドアを自分で開けて中を覗き込むと、タオル1枚で身体を覆っただけの彼女がこちらを見て舌をぺろっと出してバスルームに逃げ帰った。

おいおい、やる気満々じゃないのこれは(嬉)


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小姐写真115
2008 / 08 / 03 ( Sun )
さて、ここでまた小姐写真のコーナーです。
今回で第115弾になります

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この小姐は結構使ってますね。第3部の16話の最後、第4部の34話の最後、40話、そして73話の最後。

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この小姐中国のタレントさんです。名前は、杨渝渝 (Yang Yuyu)
。1982.4.17生まれ、成都出身、身長 170cm。

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本人のブログはこちら
http://blog.sina.com.cn/yangyuyu
動画はこちら
http://tw.youtube.com/watch?v=DlTFCZoK-ps

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次に紹介するのは、本編第3部63話の最後、第4部55話最後、70話最後で使った小姐です。
名前はよくわかりません。

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ま、かわいければ何でもいいってことで。

そんなこんなで今日はおしまい。
いよいよ大詰めになってきた体験談は、明日からまた再開です。


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4-75.新興市場
2008 / 08 / 02 ( Sat )
CN4-75

明けて翌年。年始仕事初めの日。

正式な始業日より一日早く事務所に集まり、会議室で一升瓶を開けて年頭挨拶で乾杯をした後は、昼前から自分の席でコップ酒を片手に届いた年賀状の返事書きだ。

ほろ良い気分も手伝ってぶつぶつ独り言を言いながら年賀状を整理していると後ろから声をかける人があった。振り返ると本部長のSさんだ。

「どうですか、元気にやってますか最近は」
「お蔭様で頑張ってます。本部長は如何ですか?最近出張が多いみたいですけど」
「いやぁ、結構忙しくてねぇ」
「どこに行かれてるんでしたっけ?」
「ドイツだよ」
「じゃ、もっぱらソーセージとビールばかりですか?」
「そ、あとデザートもね」
「デザート?」

ドイツで有名なデザートって何だったっけか。

「バームクーヘン?」
「違うだろ。デザートって言ったらあっちに決まってるだろ」

急に声を小さくしてそう言い、小指を立ててみせる。
知らないよそんなこと。初めて聞いた。

「でも、ドイツ人ってガタイがでかくないですか?」

俺もひそひそ声で問いかける。

「ドイツだけど、女の子は東欧なんだな」

もったいぶった口調で本部長が言うのを聞き、

「ほほう」

と、思わずテンションが上がる俺。
それを見て本部長はしてやったりという表情で言葉を続ける。

「東欧からの家出少女が一杯流れてくるんだよね。これがまた、ねぇ」

いい笑顔だなぁもう。実感こもってるんですけど。
家出少女なのかどうかは胡散臭いが、東欧からというのは大いにありそうだ。これは確かに美味しいのかもしれない。

「興味ある?」
「いや、それはもう。私はS本部長派ですから。是非お力にならせて頂きたく」

おどけて言ってみせる。この辺は阿吽の呼吸だ。

「支社を開くことになったら駐在員を社内公募するから立候補しなさいよ」
「僕なんかで大丈夫ですかねぇ」
「大丈夫でしょ。上海での経験もあるし、決めるのは幹部会だけどまぁ何とかしてあげるよ」

上司との関係は重要だよな。でも、俺は気がかりが一つあった。

「でも中国の方はどうですかねぇ。拠点拡大したりしないですか」
「ああ、中国は駄目だよ」
「え?」
「全然商売にならないでしょう。やっぱり中国人は難しいね」
「そうですかねぇ」
「そうだよ。今、支社を現地の責任者に売ってうちとしての拠点はなくそうって話になってるよ」

まじっすか。そんな話になってたなんて知らなかった。
いろんな意味で風向きが変わり始めているのを感じた新年初日の午後だった。


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4-74.デジャヴ
2008 / 08 / 01 ( Fri )
CN4-74

帰国した日の夕方彼女からSMSが届いた。

「無事着いた? Oh, I started to miss you already. So trouble. 」
「I miss you too. 試験はどうだった?」
「無事受かったわ。あと数ヶ月勉強したら資格取得よ」
「おめでとう。もうほとんど取れたようなもんだね」
「でも、あなたの助けがなかったら授業を受けられないわ。あとちょっとなのに」

来た来た。

手紙の件をいきなり出さず、はすに入ってくるところが彼女らしい。実際、予想されていた反応だけど、ストレートにお願いをしてくるところは以前と違う。

でも、残念ながら俺は彼女の要求に応える気はなかった。ここ1、2ヶ月の生活から見て、お金に困っているとは考えにくかった。デジカメを買い、2、3日に一度ヘアサロンで洗髪だ。単純に計画性がないのでこういう行動に出てるんだったらそれは直すべきだ。

自分の気持ちは決まっているので、後は理屈をしっかりつけて主張するだけだ。

「俺は約束を守ってるだけだろ。君が言ったんだろ、今年一杯でいいって」
「確かにその通りよ、でもあと数ヶ月授業料を出して欲しいの」
「俺はそういうことをまた繰り返したくないから、最初に話をする時に確認したんだよ。がっかりさせないでくれよ(Don’t make me disappointed)」

と、冷たく言い放つ俺。

「わかった。もう迷惑はかけないわよ」

意外にあっさりと引き下がった彼女。逆に俺の方は言い過ぎたかとちょっと心配になる。でもここで甘い言葉を投げかけてしまっては元も子もない。ここは踏ん張るしかない。

翌日、彼女からはSMSは来なかった。俺の方からもSMSを何だか出しにくい。一体どういうトーンで話をしていいものか迷ってしまう。Messengerにログインしてそれとなく待っていてもオンラインに上がってこない。さらに2日待っても何もなし。あぁもう、歴史は繰り返すのかなぁと思っていると、4日後にSMSが来た。

「どうしてる?最近SMSくれなかったので心配してたのよ」
「Messengerで待ってたんだけどね」
「あらそう、私はPCの調子が悪くてネットができなかったのよ」

連絡が来たのは嬉しいが何となくビミョーな雰囲気。

昨年は口論が講じて決定的な溝ができて年を越した。今年はそうではないが、不穏な雰囲気は否定できない。クリスマスを祝い、年を越しながらも何となく腹を探り合うようなやり取りを続ける俺たちだった。

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4-73.車中会話
2008 / 07 / 31 ( Thu )
CN4-73

寝ている彼女に別れを告げ、立ち上がって靴を履き、外に出る。扉を開けるときの大きなきしみ音が人気のない廊下に響く。彼女の寝ているベッドに名残惜しく視線を送りながら、また大きなきしみ音を立ててオートロックの扉を閉めた。

まだ朝早いので人影が少なく、車も通らない。5分ほどしてようやく1台を見つけたが、先のほうで別の人に拾われてしまった。しばらくしてまた空車を見つけたので手を上げるが今度は乗車拒否。格好を見れば長距離乗りそうな雰囲気のはずだけど、ホテルの前につけるタクシーと違って、この辺りを流すタクシーは外人慣れしてなくて面倒に思うのかもしれなかった。

ふと振り返ると後ろの建物の入り口で体格の良い男がぼんやりとこちらを見ている。近所の人なんだろうけど何だか嫌な感じだ。スーツ姿でキャスター鞄を持つ俺の格好はこういう住宅街では浮いている。俺のことを不審に思って睨んでいるのかな。

と、その時、男が不意に俺の後ろを指差した。つられて振り返るとタクシーが信号待ちをしている。ラッキー。タクシーに駆け寄ってどんどんと窓を叩く、運転手と目が合ったのを見て後部座席のドアを開ける。カバンを放り込んでから後ろを振り返り、先ほどの男にお礼のつもりで手を振ると、男は無反応のまま建物の中に戻っていった。

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扉を閉めて運転手に「浦東机場」と言う。走り出しながら何だかごちゃごちゃ言っている。どうも上海に空港が二つあるけど浦東でいいのか、と聞いているようだ。

「不是虹橋。我要去浦東机場」 と答えると
「好的」

とようやく納得した様子。で、また話をしてくる。ジェスチャーからして今度は道順を説明しているようだ。頷いて見せると。また質問。ジー点てな言葉が聞き取れたので「9点」。それなら大丈夫、間に合うよ、といった様子でようやく会話が終った。

時々こういう人懐っこい運転手に当たる。でも俺は相変わらず語彙は少ないので今みたいな会話でほぼ限界なのだった。

高速道路を走ってると運転手がまた話しかけてくる。左前を指差すので見てみると、リニアが早回しのようなスピードで走り去るところだった。運転手が自慢げな笑みを浮かべながら何事かを聞く。大方乗ったことあるかどうか聞いてるんだろう。

“乗ったことある”と言いたいけど何て言ったらいいかわからない。面倒臭くなって。「没有」とだけ答えると、運転手は勝ち誇ったような声を上げた。

ちくしょう、本当は乗ったのに。


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